ドローンの目視外飛行関連の法律が変わる

2017年5月。空の産業革命に向けたロードマップの実現に向け、目視外飛行に関して、目視外補助者なしの飛行についての要件が国交省からリリースされました。その内容をわかりやすく解説します

ドローンでの荷物配送の実現に向けて

2018年、無人地域(人口密度4000人/㎢)でのドローン目視外飛行に関する法改正が予定されています。改正に先立ち、「無人航空機の目視外及び第三者上空等での飛行に関する検討会」が「無人航空機の目視外飛行に関する要件」が発表・公開されました。

この要件のポイントは、これまで目視外飛行はドローンを監視する補助者が基本必須でしたが、この要件で「補助者なしでもドローンを飛ばすための条件」が明記されたことです。現行の基準と比較して、どんな準備をすることで「補助者なしの目視外飛行」が可能になるかをまとめました。

ドローン目視外飛行の現行基準

まずは現行の基準を一覧にまとめましたので、ご覧ください。

現行の基準(目視外飛行の技術基準

内容基準
機体・自動操縦システム装備
・機体のカメラ装備
・地上から機体位置・異常の有無が把握できる
・フェールセーフ機能装備
操縦技量・モニターを見ながら遠隔操作により、意図した飛行経路を維持しながら飛行できる
・経路周辺において安全に着陸できる
・必要な能力を有していない場合は、関係者の管理下にあって第三者が入らないように措置された場所において目視外飛行の訓練を行うこと
安全確保の体制・安全かつ適切な飛行経路を特定する
・飛行経路全体を見渡せる位置に、補助者を配置
・補助者はドローンの飛行状況・気象情報の変化を常に監視できる
・補助者は操縦者が安全に飛行できるよう必要な助言を行う
・第三者がいる可能性が極めて低い場所は補助者なしでも飛行可能

現行の補助者の役割

役割内容
第三者の立入管理・飛行経路の直下およびその周辺を常に監視
・第三者が近づいた場合第三者と操縦者に注意喚起を行う
・第三者への衝突を回避させる
有人機等の監視・飛行経路周辺に有人機がいないことを監視する
・有人機等を確認した場合には操縦者に助言し、衝突を回避させる
自機の監視・飛行中の機体の飛行状況を常に監視する
・ドローンの挙動、計画上の飛行経路とのズレ、不具合発生などを常に監視
・継続的に安全運航を行うために必要な情報を適宜操縦者等に助言する
自機周辺の気象状況の監視・飛行中のドローン周辺の気象状況の変化を常に監視
・安全運航に必要な情報を操縦者等に対し適宜助言すること

※この一覧は「無人航空機の目視外飛行に関する要件」を整理しまとめたものです。一部を書き換えたり、省略したりしています。
原本を確認したい方はこちらから→「無人航空機の目視外飛行に関する要件」本文

現行基準では先述のように安全確保の体制の項で、補助者が基本必須であることがわかると思います。実際、広範囲での目視外飛行を行うとなると、この条件を満たすのは困難なことが起こり得ました。つまり、ドローンの機動力・飛行性能を活かす目視外飛行はこれまでは不可能に近いといっても良いかもしれません(もちろん、人を適切に配置できる条件下であれば可能でした)。

また補助者の役割も多岐にわたり、操縦はしないまでもドローン飛行のリスク、法律に深い知識があること。またドローンの挙動などから危険をいち早く察知することなどが求められています。飛行計画に関しても理解している必要があるので一朝一夕で補助者ができるようになるかというと簡単なものではありませんでした。

そうなると、補助者といっても専門知識や操縦技術を持った専門家、スペシャリストであることが望ましいと言えるのではないでしょうか? 実際、役割の中で「助言」という言葉が使われています。ということは、もしかしたら最も客観的に飛行状況を判断できる能力が求められるとも言えます。

では、今回の改正ではどのようにして補助者なしでのドローンの目視外飛行を実現しようとしているのか?

目視外補助者なし飛行の要件とは?

まずは要件の内容の一覧をご覧ください。

目視外補助者なしの飛行(全体要件)

要件項目内容
飛行させる場所・第三者が存在する可能性が低い場所(人、モノが対象)
・道路・鉄道を横切れるのは都市部以外の交通量が少ない場所のみ
・人口集中地区以外の家屋上空は離着陸時などの一時的な飛行に限定
・高度は150m未満が基本
(第三者が存在する可能性が低い場所)
山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場など
機体の信頼性の確保・想定される運用で十分な飛行実績を有する
不測な事態への適切な対応・飛行中にモーター不具合等の不測の事態が発生した場合に備え、全ての飛行経路上において地上の人や物件に危害を加えすに着陸・着水ができる場所を予め選定する
・緊急時の実施手順を定めている
・飛行前に飛行経路またはその周辺が適切に安全対策を講じることができる場所であることを現場確認する

ここではまず明確に「第三者が存在する可能性が低い」ことが条件として挙げられています。また機体の信頼性についても「飛行実績」が必要。ということは使えるドローンは限定されるワケです。自作機やテストされていないドローンは使えない。。ということ。

さらに不測の事態に備えて、何が起こっても第三者に危害を加えないことや事前の現場確認も求められています。操縦技量ももちろんですが、事前の準備も必須ということですね。そして、さらに個別要件として立入管理区画についても公開されています。

目視外補助者なしの飛行(個別要件)

個別要件項目内容
第三者の立入管理・無人機が落下し得る範囲を考慮し、立入管理区画を設定
・この範囲は落下範囲が最大となる条件で算出すること
・メーカーにより適切に評価されたパラシュート等の第三者に危害を加えないことが保証された装置を使用する場合はこの限りではない
立入管理区画または機上装置・地上設備・機体または地上に常に進行方向の飛行経路下に第三者が立ち入る兆候を確認できるカメラを設置
・操縦者等が飛行経路上に第三者が立ち入る可能性がある場合、即座に回避する
・立入管理区画に看板等の物理的な目印を設置する
・問合せ先を明示した上でインターネットやポスターによりドローン飛行について近隣住民・関係者に広く周知するなど、第三者が立ち入らないよう対策を講じる
・立入管理区画に道路、鉄道、家屋など第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合は、追加の第三者の立入管理方法を講じる
有人機の監視・航空機からの視認をできるだけ容易にするため、機体に灯火を装備する
・機体は認識しやすい塗色を使う
・飛行前に飛行経路周辺の有人機の運航者に飛行予定を周知する
・有人機の飛行日程・経路等を確認する
・有人機との接近のリスクがある場合は飛行の自粛や計画変更を行う
・ドクターヘリ、警察、消防機関とは緊密な連絡体制を講じる
・機体または地上に、常に飛行経路周辺を監視できるカメラを装備または設置する
・飛行させる空域に有人機等を確認した場合は特座に着陸する等の安全措置を講じる
自機の監視・地上において機体の状態(位置、進路、姿勢、高度、速度等)を操縦者が遠隔で把握できる
・操縦者等は、機体の異常または計画上の経路から逸脱することが判明した場合には、計画した飛行経路にもどす、付近の適切な場所に着陸・着水させる等の対策をとることができること
自機周辺の気象状況の監視・飛行経路の直下もしくはその周辺、または機体に風速センサ、カメラ等を設置
・気象状況を操縦者等が確認できること
・操縦者等は、メーカーの定める機体の運用限界を超える気象状態を把握した場合には、即座に付近の適切な場所に機体を着陸・着水させる等の対策を講じること
操縦者等の教育訓練・飛行させる操縦技量の取得のため、遠隔からの機体等の状態の把握ができること
・状況に応じて適切な判断ができること
・これらの操作等に関し座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていること

ここでは
・第三者の立入を管理する対象範囲を明確かつ厳密に選定すること
・立入管理区画内での機体や地上設備について
・事前の周知
・飛行時に新たな第三者が立ち入るのを極力避ける管理方法について

などが書かれています。

実際の具体的な事例もリリースの中に明記されていて、
立入管理区画に
・道路が含まれる場合
・鉄道が含まれる場合
・家屋が含まれる場合 の対応事例があります。ここでも事前調整や周知、飛行時の対策が書かれています。

原本を確認したい方はこちらから→「無人航空機の目視外飛行に関する要件」本文

有人機等の監視

ドローンを飛ばす上で絶対に避けなければならないのが、有人機との事故です。海外ではドローンと飛行機、ヘリコプターの接触事故が報じられています。ドローン自体は飛行機やヘリと比べれば小さくても、状況次第では相対速度は時速数百キロになります。もし、その衝撃でヘリコプターのブレードが。。。飛行機の翼が。。。エンジンが。。。どうなってもおかしくないですよね。。実際、ドローンの推力ではジェット気流?的な風に巻き込まれたら一たまりもありません。コントロールは実質不可能になるでしょう。

とあるヘリコプターのパイロットの方に聞いたところ、飛行中にドローンを目視確認するなんて不可能と言っていました(笑)。笑い事ではありませんが、避けるべきはドローンの方。近づかないという選択が最も正しく事故を防ぐ方法です。

というわけで、そのための要件が書かれているワケです。

自機の監視

そして自機の状況を監視することが次に挙げられています。目視外でも常にドローンの状況を把握できること。緊急時にも確実に操作できる必要があります。

気象状況の監視

目視外にせよ、目視内にせよ操縦者は気をぬく瞬間は全くありません。そんな中、外的要因としてドローン事故が起こり得るのが気象です。雨、風、霧など状況をより明確に確認できていることが必要になってきます。そこで大切なのが気象状況の監視と操縦者に対しての情報提供と助言と言えます。とにかく、危険要素をいち早く察知し、リスク回避をする。そして操縦者は危険状態に陥った場合は「即座」に着陸・着水させることが求められています。

操縦者の教育訓練

遠隔からの機体等の状態の把握、状況に応じた適切な判断及びこれに基づく操作等に関し座学・実技による教育訓練を、少なくとも10時間以上受けていること(無人航空機の目視外飛行に関する要件〜目視外補助者なし飛行の要件〜個別要件より)

また具体的な求められる基準も示されています。

具体的な例
a 飛行中に、カメラ等からの情報により、立入管理区画における第三者の有無等、異常状態を適切に評価できること。
b 把握した異常状態に対し、現在の飛行地点(飛行フェーズ、周辺の地形、構造物の有無)や機体の状況(性能、不具合の有無)を踏まえて最も安全な運航方法を迅速に判断できること。
c 判断した方法により遠隔から適切に操作できること。

これは確かに一朝一夕ではできません。準備も必要ですし、カメラだけで周りの状況を的確に、そして素早く確認する技量が求められます。あなたは迅速に安全な着陸場所を見つけられるでしょうか? また、モーター停止し即墜落する方法をご存知でしょうか? そのための訓練はもちろん安全な場所で行えるでしょうか?

(2018年6月11日追記)
国交省の無人航空機窓口に確認したところ10時間の教育訓練は追加で受ける必要はないとのこと。これまで通りドローンスクール受講で条件を満たせます。ただし、目視外飛行については別途1時間以上の飛行が必要になります。知識については法律・知識・機体などについて経験者から学ぶことが望ましいようです。

今回のこの要件はあくまでも「無人地域」を想定したもの。これが2020年には「人口集中地域」でもドローンが飛ばせるように諸条件が定められると思われます。そしてその内容はもっと厳しく、正しい知識、確実な技量、そして豊富な経験が問われるでしょう。

現段階では輸送に特化した内容が中心です。しかし「空の産業革命に向けたロードマップ」では有人地域でもインフラ点検なども想定されています。

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もしその分野ですでに業務を行われているなら、ドローンを使わない手はないですよね。人が点検する数倍、数十倍の効率でインフラ点検が可能になるドローン。業務効率化、低コスト化、人員削減、業務上の危険回避など多くのメリットを享受できるハズです。早ければあと2年。少なくとも5年以内にはある程度の実用化が進むでしょう。

ドローンの目視外飛行の知識を学び、キャリアを積むのは早い方がいいかもしれません。運用経験を積み、ノウハウを蓄積しライバルより先んじる。ビジネスの鉄則でもありますよね。

まとめ

目視外飛行は目視内飛行よりも圧倒的に事故リスクは高くなります。しかし、「社会が許容できる安全レベル」まで引き上げなければドローンの運用・飛行はできません。そのための要件が今回のリリースです。活用が進むにつれて、ドローンでの目視外飛行に求められる業務は複雑かつ難しいものになっていくのは容易に想像できます(規模が大きくなる、速さが求められる、高い安全性が求められる。など)。その際に生きてくるのが、基本知識+基本技術をベースとした経験値(実績)です。多くの案件をこなし、あらゆる環境、状況に対応できる業者が多くの業務をこなせるようになる。これは明らかです。

この法改正は、本当に大きな波の前兆です。今、その波に備えていくことがドローンが活用される時代に取り残されない方法といえるのではないでしょうか?

(JUIDAスクール認定講師 松永和仁)

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